【第489回】  本当の合気の力を出すために その2

前回は「本当の合気の力を出すために」、まずは自分自身の中から最大限の力を出すように稽古しなければならない。だが、それでは力の限界があるので、その上の力を出すためには、次の次元の稽古に進まなければならない、と書いた。

そこで、今回は「本当の合気の力を出すために」はさらにどのような稽古をしていけばよいか、を研究してみたいと思う。

本当の合気の力を出すために、開祖は「一霊四魂三元八力や呼吸、合気の理解なくして合気道を稽古しても、合気道の本当の力は出てこないだろう」といわれている。だから、霊四魂三元八力、呼吸、合気を理解しなければならないことになる。

霊四魂三元八力と合気はこれまで研究してきているので、後は、それを技で実践していけばよいだろう。すると、本当の合気の力を出すためのポイントは、取りあえず「呼吸」である、と考える。自分以外の自然や宇宙の力をお借りするためには、呼吸が大事であるし、また、呼吸でしかそれらと人間の自分が結びつかないはずだからである。

開祖は「地の呼吸と天の呼吸とを頂いてこのイキによって技を生み出してゆく」といわれている。技は、地の呼吸と天の呼吸によって生み出されるから、本当の合気の力も出ることになるはずだ。

人が地の呼吸や天の呼吸を頂くことなど不可能のようだし、どうすればよいのかもわからないが、開祖は次のようにもいわれている。「人の息と天地の息は同一である。つまり天の呼吸、地の呼吸を受け止めたのが人なのです」。あとは、やるかやらないかだけである。

まず天の呼吸であるが、開祖は、天の呼吸は日月の息だといわれている。私の考えでは、それは天と地を結ぶ縦の呼吸であると思う。人間の体でいうと、縦の腹式呼吸であろう。この天の呼吸によって、地が呼吸するといわれるから、天の呼吸から始めなければならないわけである。例えば、イクムスビの呼吸もイーと吐くわけで、腹式呼吸であり、天の呼吸ということになる。

地の呼吸は、潮の満干で、満干は天地の呼吸の交流によって息をする。地の呼吸は横の呼吸で、人間の場合は、横の胸式呼吸であろう。

そして、この天の呼吸、地の呼吸(潮の干満)を、腹中に胎蔵するのである。「息を出す折には丸く息を吐き、ひく折には四角になる。丸は天の呼吸を示し、四角は地の呼吸を示すのである」のである」
これを記号をつかって表わすと、「腹中にを収め、自己の呼吸によっての上に収める」となる。

さらに、開祖は「息を吸い込む折には、ただ引くのではなく全部己の腹中に吸収する。そして一元の神の気を吐くのである」と言われている。また、息を吸ったら、自分の魂が入ってくるし、吐く息の中に自分自身がいる、ともいわれるのである。

天の呼吸(日月の呼吸)と地の呼吸(潮の干満)に、己の縦の腹式呼吸と横の胸式呼吸を合わせて体をつかい、技をつかうのである。自分以外の力をお借りできるのだから、さらなる合気の力が出るはずである。

天地の呼吸がつかえるようになれば、つぎの次元の稽古に入ることができるだろう。それを、開祖は「天地の呼吸に合し、声と心と拍子が一致して言魂となり、一つの技となって飛び出すことが肝要で、これをさらに肉体と統一する。声と肉体と心の統一ができてはじめて技が成り立つのである。霊体の統一ができて偉大な力を、なおさらに練り固め、磨き上げて行くのが合気の稽古である」といわれている。

天地の呼吸に合わせ、声と心と拍子を一致して言魂を産み出し、言霊と肉体の一体化ができれば、偉大な力、つまり、本当の合気の力が出る、と保証して下さっているのである。これは、やるしかないだろう。