【第482回】  宇宙との一体化

合気道の技は、宇宙の気と自己の気が一体となってはじめて成り立つ、ともいわれ、技は宇宙と己の一体化で成り立つものである。宇宙の営みを形にした技を錬磨することによって、宇宙になり、宇宙と一体化していくわけである。そして、合気の技がつかえるようになるのである。

しかし、合気道の目標は技が成り立つためにやるだけではない。つまり、さらなる先の目標がある、ということである。技は、その先の目標に進むための土台である、ということである。

そこで、技の先の目標とは何か、その意味はどんなものなのか、を研究してみたいと思う。その目標とは、宇宙との一体化である。しかし、宇宙との一体化とはどういうことなのか、宇宙とはどのように捉えればよいのか、を考えなければならない。

宇宙とは、宇と宙である。宇とは、空間のことである。四方上下の空間であり、顕界・幽界・神界であろう、と考える。また、宙とは往古来近の時間であり、過去・現在・未来、と考える。つまり、時間と空間に自由に生きることが、宇宙との一体化ではないかと考える。

これをさらに具体的に考えてみると、まず時間である宙の過去、現在、未来に生きることであるが、例えば現在やっていることが未来につながり、未来の人たちに喜んでもらえることになれば、未来にも生きることになるだろう。また、先人の残してくれた事を研究したり精進していくことも、過去につながり、過去に生きることになるだろう。

また、時を厳密にみれば、人だけでなく、万有万物は常に現在、過去、未来を同時に生きている。今という現在などすでに過去になって、すでに未来へ移行している訳である。いうなれば、現在とか今などないのである。

開祖は過去に行くことも、未来にいくこともできたようであるが、我々凡人がそこまでできるようになるかどうかは分からない。だが、少なくとも、過去を学び、過去の遺産を受け継ぎ、そして学び、研究して、未来のために生きることが、宙の過去、現在、未来に生きることになるだろう。

次に、宇の空間である顕界・幽界・神界に生きることである。顕界とは見えている世界、幽界とは見えていない世界とか仏の世界、神界は神の世界である。これは、顕界をしっかりと生き、体と経済の土台をつくり、そして、物質科学を離れ、精神科学の幽界を楽しみ、さらに宇宙の生成化育を担っているといわれる神々の世界に入り、神々とご一緒できるようになることではないだろうか。

そのためには己の使命をしっかり果たし、神の仲間にならなければならないだろう。それには、開祖を考えるとよい。開祖は、合気の世界の神になられたのであるが、生前すでに神界に遊ばれていたわけである。

なお幽界については、さらなる研究が必要なようなので、次回のテーマとする。

このように、過去、現在、未来にも、顕界・幽界・神界にも、自由に生きることが宇宙との一体化ということであり、合気道の最終目標ではないかと考える。