【第43回】 体三面に開く

開祖は相手に技をかける前に、よく「心をまるく体三面に開く」と言われていた。また、これが絶対不敗の体勢だともいわれていた。

心を丸くというのは、一つには恐怖心、虚栄心、慢心などの角ばった心ではなく、相手や宇宙を包み込むような心を持てということ、もう一つは、心、つまり気を相手にだけではなく、前後左右、すべてに放射せよということであろう。従って、道場で多くの人たちと一緒に稽古をしている場合は、自分の稽古相手に対してだけでなく、前後左右の周りの人たちに対しても気を送り、気結びせよということであろう。これで四方八方の敵に対処できるだけでなく、まわりで稽古をしている人たちへの気遣いともなり、怪我や事故などを予防することにもなる。ここにも合気道は愛である、という精神があらわれる。

体三面に開くとは、半身の構えをとるということであろう。植芝吉祥丸先代道主の書かれた「合気道」で、左構えが図解されているのでそれを使わせて頂く。

三面とは、前足と後ろ足を結ぶ線(面)、それに直角となる後ろ足かかとの線(面)、それと前足から後ろ足先を結ぶ線(面)(赤い線)の三つの線、面である。
この三本の線で三つの面を形成し、三角を形成する。

合気道ではよく、三角で入れと言われるが、三角の先端は尖っているので抵抗少なく入り込んでいけることになる。その上、この先端の角度は無限にゼロに近づけることができる。

構えには、この半身の他に、相手に対して完全に横向きになる一重身、正対姿勢である向身があるが、突きや蹴り、武器などすべての攻撃にもっとも対処しやすく、素早い動きができるのはこの半身であろう。

合気道の技はこの半身から半身への変換であるといえる。この半身の形、三面が崩れると、技も崩れることになる。その上、前足から後ろ足先を結ぶ線(面)(赤い線)が、三角面の左、右・・・と変換するのが基本となろう。それに、この赤い線の面がしっかりしていないと技はきまらない。この三面はすべて大事であろうが、特にこの赤い面が重要のようだ。入り身したり、剣を使う場合、この面に沿ってさばくと相手を崩しやすいようである。