【第417回】 四魂と八力

開祖は「一霊四魂三元八力や呼吸、合気の理解なくして合気道を稽古しても合気道の本当の力は出てこないだろう」といわれている。つまり、呼吸、合気、そして、一霊四魂三元八力の理解なくして、合気道の上達はない、ということになる。

呼吸であれば、天地の呼吸に合わせるとか、生むすびの呼吸でやるべきである、などと理解できるだろう。また、合気は最終的には宇宙との合気であり、宇宙との一体化である、ということも考えられることである。だが、一霊四魂三元八力が充分には理解できないように思われる。

一霊四魂三元八力の一霊とは、宇宙を創造し、宇宙楽園をつくるべく、万有万物に分身分業で使命を与え、生成化育を導いている大神様と理解している。また三元とは、流柔剛の働き、△〇□であるだろう。

しかし、残りの四魂と八力が、今ひとつ理解できないのである。今回は、それに挑戦し、一霊四魂三元八力をある程度理解できるようにして、合気道の上達につなげたいと思う。

はじめに、四魂である。四魂とは、奇霊(くすみたま)、荒霊、和霊、幸霊のことである。まずは、この四魂を宇宙ができ、地球ができていく時系列で考えてみると、分かりやすいのではないだろうか。

開祖は「その大虚空に、ある時ポチ(・)一つ忽然として現わる。このポチこそ宇宙万有の根源なのである。そこで始め湯気、煙、霧よりも微細なる神明の気を放射して円形の圏を描き、ポチを包みて、始めて“ス”の言霊が生まれた。これが宇宙の最初、霊界の初めであります」といわれている。この形も動きもない微細なる神明の気が、奇霊であろうと考える。

次に、その奇霊が荒れ狂うビッグバンとなり、星ができて、それらがぶつかり合い、地球では火の海から、大雨、嵐などなど、長い間荒れ狂うことになる。これは、荒霊になるだろう。

それが治まると、天と地が分かれ、海と陸地ができ、植物や微生物などの生命体が生まれるようになる。これが、和霊であろう。

そして、地球上で、海には魚、陸には植物や動物が生れて、共存共栄しながら生きるようになる。地球の土台の完成である。これが、幸霊になろう。

従って、奇霊は大本である。このようにわけのわからない霊なので、「奇」の霊というのだろう

次に、八力である。この八力の引力によって、大地を全部固めしめ、一つの大きい全大宇宙という活動機関ができ上がったといわれる。一霊四魂三元八力の八力とは、沢山ということだともいわれているが、やはり八つの力があるはずである。

八力とは、動、静、引、弛、凝、解、分、合であるともいわれるが(本田親徳)、合気道的に考えてみたいと思う。

開祖によれば、人は伊豆能売(いずのめ)にならなければならない、ということである。伊豆能売というのは「径魂たる荒、和、二魂の主宰する神魂を厳の御魂といい、緯魂たる奇、幸二魂の主宰する神魂を瑞の御魂といい、厳瑞合一したる至霊魂を伊豆能売の御魂という」。従って、荒霊(霊は魂と同じ)と和霊は縦に働き合い、奇霊と幸霊は、荒霊と和霊の縦に対する横の十字で、働き合っていることになる。

八力は遠心力と求心力からなる引力であるから、お互いに対象があるはずである。

  1. 荒霊 − 和霊
  2. 奇霊 − 幸霊
  3. 荒霊 − 奇霊
  4. 荒霊 − 幸霊
  5. 奇霊 ― 和霊
  6. 和霊 − 幸霊
  7. 荒霊 − 和霊の縦と一霊
  8. 奇霊 − 幸霊の横と一霊
図で示すと下記のようになるだろう。
「四魂の動き、結びて力を生ず。愛を生み、気を生む」ということは、四魂が働くと結び合って、力、つまり引力が、生じるようになる、ということだろう。

「世の初め宇宙は水火天地を分けたまい、さらに神は一霊四魂と水火より生み出した元素と力をもって、万有の心と体を造り、これを万有に賦与した。地祇もまた、三元と八力をもって霊と体を造り万有に分かつ。」(「武産合気」)とあるから、この四魂からの元素と力で、宇宙の心と体をつくり、八つの引力の八力と三元で、地上の霊と体をつくったのであろう。

これで、一霊四魂三元八力とは、何もないところから宇宙をつくり、万有万物を生み、宇宙楽園、地上天国をつくるための大神様の営みの姿であり、宇宙の、そして、万有万物の活ける姿、宇宙システムの姿ということになる。すると、合気道はこれを身の内で営むこと、になるのではないかと考える。