【第41回】 十字

開祖は「十字つまり合気である」といわれた。天地の縦の気|と水火の横の気─が二つ結んで十字となる。縦の気の流れは高御産巣日・神産巣日神、横の気の流れは伊佐那岐・伊佐那美神が司るといわれる。

技を掛ける場合、力がいるわけだが、人はどうしても手先の力になり、弱いだけでなく、相手が反発する嫌な力をだしてしまう。一番強い力は無理のない、自然な力である。一口でいうならば、それは自分の体重を有効に使うことであろう。つまり、体重を縦横十字に使うことである。

人が普通に立った場合、自分の体重を移動できるのは、基本的に上下と左右の四方向である。従って、技を掛けるときも、身体の使い方、手足の使い方は原則的に上下左右に使うことになる。足が前に進む場合でも、横に出る力を前に方向転換して置いたものといえるし、手を前に出して、打ったり、突いたり、張ったりするのも横に出た力を前に方向転換するものである。肩、肩甲骨が十字の━になっているので、それが自然なのだろう。

また、十字では、縦と横の交わるところに大きなエネルギーが集まる。合気道の多くの技において、技を決める場合十字にするとよく効く。分かりやすい例として「肘きめ」(肘ひしぎ)(写真)や腰投げがある。どちらも十字になっていないと技としてぜんぜん効果がなくなる。初心者は接点のところが十字にならず平行になってしまうので効かない。この他、一教でも、腕がらみでも十字になるようにきめるといい。また、相手を倒したとき、自分の立っている方向と、相手の倒れている方向が十字になっていなければならないだろう。

しかし、開祖は、「この天と地の呼吸の交流を受けて、立派な人となることを目標に(十字つまり合気である)合気は鍛錬していく。」といわれている。先はまだまだ長い。