【第346回】 「合気道は宇宙ができぬ最初から出来上がっていた」

開祖は「合気道は、人間がつくった武道ではなく、宇宙が出来ぬ最初から出来上がっていたものであります」と言われている。初めにこれを開祖からお聞きした時やこの文章を見たときは、誰でも「???」となるだろう。

しかし、稽古を長く続けてくると、この開祖が言われていることが、ああ、こういうことかと分かってくる。

これが分かるためには、先ず、

を頭に叩き込まなければならないだろう。

初めの「合気道は、人間がつくったものではない」とは、開祖がよくいわれていたように、合気道は宇宙の営みを形にしたものであり、我々稽古人はその宇宙の営みである宇宙の法則に則り、少しでも宇宙の営みに近づこうとしているのである。つまり、合気道は人が主体的に造ったものではなく、宇宙がつくられたものを人が頂くのである、ということである。

二つ目の「宇宙が出来ぬ最初から出来上がっていたもの」というのは、宇宙ができたときには合気道はできあがっていたということである。宇宙がつくられるためには、一元の大神様の思いと法則があったはずで、その法則を合気道といっているのだと考える。

合気道には形がない、といわれるが、宇宙の法則というものがある。宇宙の法則というのは、上記の宇宙ができるための法則と、宇宙が今、現在活動している法則、ということになろう。

合気道は技を練磨して精進するが、合気道の技には法則性がある。この法則は人間が考え出すようなものではなく、まさしく宇宙を創造するため、宇宙の営みのための身姿、身振る舞いの宇宙の法則である、としか考えられないものである。

例えば、天之浮橋に立ち、魂と魄のバランスがとれるようにする。縦横の十字が円くなり、螺旋になって力を出していく。円の動きの巡り合わせで、自分と相手の円の接点から、相手を自分の円に入れていく。陰陽が交互に働き合う。天の気に合わせて、天地の呼吸をする。天の縦の呼吸と地(潮の干満)の横の呼吸とで、呼吸も十字になる。などが挙げられよう。

開祖は、「無性と有性の大原則ことごとく宇宙の営みの元を生み出した。それが合気の根元となる。つまり古典の古事記の実行が合気である」と言われている。

このような宇宙の法則・条理に則って技をつかっていくと、「合気道は宇宙ができぬ最初から出来上がっていたし、今、現在の宇宙の営み」ということが、つくづくと感じられるようになるのである。