【第263回】天の呼吸と技
合気道の技は宇宙の営みを形にしたものなので、宇宙の法則性を有しているはずで、技がよいか悪いかは、この宇宙の法則性にどれだけ則っているかということになるだろう。
よい技を掛けたいのならば、宇宙の法則に則った、それに逆らわないものにしなければならないだろう。さらに、宇宙の支援を受けることができるような技遣いや体遣いができれば、よいはずである。
開祖は、「技は天地の呼吸の交流から生まれる」と『武産合気』に書かれている。天の呼吸(写真)は縦、地の呼吸は横と考えていいだろう。従って、技はこの縦横十字の天地の呼吸によって生み出されるもので、この呼吸に合わせて息と体を遣っていかなければならないことになる。
さらに、開祖は「天の呼吸との交流なくして地動かず、ものを生み出すのも天地の呼吸によるものである。」「天の呼吸により地も呼吸するのであります。」(『武産合気』と言われている。天の呼吸により地も呼吸するといわれるのだから、まずは、縦に天からエネルギーを得なければならないことになる。
そのためには、手を動かす以前に、足を大地にしっかりつけ、体を一軸にして、天から垂直にエネルギーを取り入れなければならないことになる。その後、今度は、横の地の呼吸に合わせた動きをすればよいのである。これを逆にやってはいけない。
ひとつの技には、この縦横の十字の動きが複数回あるはずであるが、常に縦の天の呼吸を主体にしなければならない。例えば分りやすいと思われるのは、「坐技呼吸法」である。手を振り回すのではなく、持たせた手で相手と結んでくっつけてしまったら、手は動かさずに息を入れながら、自分の重心を真下に落とすと、相手は真上に浮き上がってくる。
「天地投げ」では、天側の手を上げるときも、天の呼吸をしっかりすれば、相手は自然に浮き上がってくるので、後は相手をどうにでも制することができるようになる。
「呼吸法」でも、まずは天との縦軸の呼吸で体を沈めて、床からの縦の力(パワー)を横の腕に伝えてから動かないと、腕や体が横の地の呼吸で働かないし、力が集中して遣えないはずである。
自主稽古で、天の呼吸の重要さがわかる稽古法がある。
- 四股:地につけた足に全体重を掛け、息を出しながら沈み、沈みきったところから息を下腹に入れていくと、反対側の足が上げようとしなくとも自然と上がっていく。足を上げようとすると、うまく上がらないものである。これは、横の地の呼吸からやっているからである。
- 剣の切り下ろし:切り下ろすまえに、まず、真っ直ぐ立ち、気持ちと力を足底から体の中、剣を通って天にむすび、息を吸いながら天の呼吸をする。その後、天の息を吐きながら切り下ろす。切るというのは、縦から横への動きである。
これを素手でやる場合も同じであるから、例えば正面打ちでも「天の呼吸」を注意してやらなければならない。
技は、天の呼吸を意識し、天の呼吸優先で遣うように、また、天の呼吸により地の呼吸が呼び起こされるように、練磨しなければならないだろう。
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