【第261回】合気道の禊(みそぎ)

合気道は技を練磨して精進していくが、技の練磨は勝負をしたり、相手に勝つためにやっているのではない。スポーツは勝つため、武術でも相手を制するためという目標があって修練をしているが、合気道は何を目標に技の練磨をしていけばよいのだろう。

有難いことに、かつて開祖からこの件に関しても、耳にタコができるほどにお聞きしている。書物にも、師のお言葉が残されている。

開祖は、合気道は「禊(みそぎ)」である、と言われている。まず、合気道は、体のカスを取る禊(みそぎ)であるという。合気道の技を練り合うことによって、体の節々の関節と筋肉のカスを取り除き、柔軟にする。特に、一教、二教、三教はカス取りの技とも言われているほどである。

また、体を動かすことによって、深呼吸をし、血行がよくなるので、血液のカスが取れ、これも禊になると言う。それに、稽古に集中すれば、雑念が払われ、精神(心)が禊がれ、さわやかな気分になる。

ここまでは、合気道は自分の心身のカスを取る禊ということになり、誰にでも理解でき実行できるだろう。だが、開祖は、合気道にはさらなる禊の役割があると言われているのである。

曰く、「合気は地上の禊(みそぎ)、祓(はら)いです」。つまり、合気道は、地上にあるものを禊ぎ、邪気を祓い、地上楽園を完成するためのものであるということである。さらに、「合気道とは、宇宙みそぎの大道」であるといわれ、宇宙建国完成のお手伝いをすることであると言われている。

この「地上の禊」と「宇宙の禊」があるので、合気道の道はまだまだ先があるようだ。そこまで行けるかどうか、誰にも分からないだろうが、合気道同人は少なくとも挑戦すべきであろう。そんなことは出来ないとみんなが諦めたならば、きっと開祖は悲しまれることだろう。一歩ずつ近づいて行くしかない。そこから、また次の誰かが引き継いで進んで行けばよい。

心身の禊から「地上の禊」と「宇宙の禊」へ進むキーワードは、「言霊(ことだま)にあるように思う。開祖は「合気は言霊の響きによる禊の業をいう」(「武産合気」)と言われているし、また、「合気道とは、言霊の妙用であり、宇宙みそぎの大道」(同上)とも言われているのである。

言霊とは宇宙の響きであるから、この宇宙の響きを感応できなければ先に進めないことになる。だが、合気道を精進していけば、「地上の禊」と「宇宙の禊」につながるとも言われているわけだから、技の練磨を続けていけばよいのではないだろうか。そうすれば、言霊の響きに感応して、宇宙みそぎの大道を進むことになっていくのではないだろうか。