【第26回】 気結び

本部道場に40数年前から通っているが、稽古を指導される先生によっても、道場の雰囲気や緊張感が随分違ってくるように思われる。だいたい道場で緊張して稽古をするというのも、一つには稽古をしている姿を先生に見られているような気がするからでもある。稽古中は、道場全体の雰囲気がピーンと張り詰めていることからしても、おそらく全員が先生に見られていると思い、真剣に稽古をしているからに違いない。

事実、そのように緊張した時間の先生に聞いてみたことがあるが、その先生は、稽古が全員何をしているか見ているし、どの先生の系統なのか、どんな癖をもっているのか、どのぐらい進歩しているのかなども見ているというお話であった。つまり、そのような先生は、稽古中には稽古人と「気結び」をして教え導いているのではないだろうか。そして、この「気結び」があるために、技を覚えたり、新たな発見があったり、進歩があるのだろう。

ある人が開祖に、開祖の稽古時間には上手くいくのに、一人でやると上手くいかないという話をしたら、自分が「気結び」しているから上手くいくのだと、開祖が答えられたそうである。

合気道では「気結び」が大切であるといわれる。稽古をするにあたって、相手と「気結び」ができていなければ、相手を導くこともできず、いい稽古はできない。「気結び」は稽古相手だけとだけやるものではない。道場に入るときから出るときまで、道場との「気結び」も必要である。道場との「気結び」ができていないと、足を投げ出して坐ったり、床の間に向かって相手を投げるようなことをしてしまう。

この「気結び」をするためには、礼と儀式が大切である。道場に入るときの礼(儀式)、稽古をはじめるときの先生に対する礼、稽古相手に対する礼である。この礼と儀式をしっかりやらないと「気結び」ができない。稽古での「気結び」ができれば、学校、会社、社会などで活動や仕事をするにあたっても「気結び」ができるようになるだろう。そうやって自分と関係のあるすべてと「気結び」し、最終的には宇宙との「気結び」ということになろう。