【第25回】 潮満珠(赤玉)と潮干珠(白玉)

海は人を惹きつける。海は人類を生みだしてくれた「母」であるからだろう。また、海はいろいろなことを教えてくれている。
海の水はぶつかって波をつくる。一方方向にのみ流れていれば、波はおきない。行く流れと来る流れが合って波ができる。この水がぶつかるところ、波ができるところは陰陽のエネルギーが合い備わったところで、膨大なエネルギーができる。

この膨大なエネルギーを作り出すものに潮の干満がある。
合気道の技をかける時でも、出す(赤玉、遠心力)だけでは駄目で、そこに引く力(白玉、求心力)も備えられていなければ、技は効かない。例えば、入り身投げで相手を倒すとき、体の転換で充分相手体と気持ちを引き込みながら(白玉、求心力)、そこに遠心力を備えた手をぶつけ(赤玉)、そして手と脚を進めて倒す。この白玉と赤玉がぶつかったところには膨大なエネルギーができるので、相手を制することもできるわけである。

合気道は「禊」(みそぎ)であるといわれる。開祖は、これを潮満珠と潮干珠に象徴させ、「人々のみそぎとなるには、赤玉白玉に神習うことである」と言われる。技をかけるにあたっても、穢れがない技のかけ方をしなければならないことになる。穢れのない技のかけ方とは、自分が納得できるだけでなく、相手に不愉快な思いをさせない、相手も納得するかけ方でもある。つまり、それは無理の無い、自然の動き、自然の呼吸に同化するということになる。開祖は「日月の呼吸と潮の満干の呼吸。人はこれらの呼吸を頂いている。この呼吸に同化し生まれたる人々は大神の呼吸に同化することなのであります」と述べておられる。