【第240回】 技と宇宙

合気道は技の練磨を通して精進し、宇宙と一体化する道であると教わっている。また、合気道の技は宇宙の営みを形にしたものであり、宇宙の条理、宇宙の法則に則っているといわれる。宇宙は137億年という歴史と無限の空間をもつ想像もできない規模を有しているから、この宇宙の営みも想像を超えるものであろう。

合気道的に宇宙を考えてみると、宇宙は宇宙の営みでつまっているとも言えるだろう。つまり、宇宙は技でつまっているわけである。ここでの技とは、いわゆる私が言うところの技要因であり技要素である。陰陽、十字、螺旋、引力などなどである。宇宙は限界がないので無限であるから、この技要因も無限にあることになる。無数の技要因がぎっしりつまっているのが宇宙ということもできるだろう。(図参照)

合気道は、技要因(要素)を会得していく道である。心身に技要因を入れていくというより、その技要因に心身をはめ込んでいくのである。無限にあると思われる技要因に、自分の心体をはめ込んでいくのである。具体的には技要因の形にはめ込んでいくことになるだろう。

技要因に心身をはめ込まれていけばいくほど、その人は宇宙に近づくことになるはずである。心身が技要因にひとつでもはめ込まれれば、その人はひとつの技要因の分だけ宇宙に近づいたことになる。だから、少しでも多くの技要因に心身をはめ込めば、それだけ宇宙に近づくことになるはずだ。合気道の稽古の最終段階はこれではなかろうか。

開祖が「われは宇宙である」といわれたのは、宇宙にある技要因が自分の心身の中にもあり、宇宙とわれは同じ技要因を有し、同じであるという意味ではないかと考える。「われは宇宙なり」といつの日か言えるようになりたいものである。