【第144回】 省エネ
合気道は時代に合わせ、時に連れて変わって行かなければならないと教わっている。時代が変わっているのに、以前と変わらない合気道をやっているのでは、いわば「化石」のような存在となってしまう。合気道を修行するものは、時代に遅れない、時代の先を行くものでなければならないだろう。
今、世間で重要視されていることの一つに、省エネがある。ビジネスや家庭では省エネに気を遣い、努力をしているはずである。しかし、稽古を見ていると、多くの人は、この時代が目指している省エネを意識して稽古をしているようには思えない。このままでは、時代の先を行って、時代を導かなければならないはずの合気道が、時代の後塵を拝することになってしまう。稽古で技を掛けるのも、受けを取るにも、省エネという観点に立っての稽古も必要ではないだろうか。
そこで、合気道の稽古での「省エネ」とは何か、「省エネ」のためにはどうしなければならないのかを考えなければならないことになる。
省エネでないエネルギーの遣い方は、エネルギーの浪費である。浪費というのは、出されたエネルギーが逃げてしまい、エネルギー効率が低いということである。それを技を掛ける場合にあてはめると、次のようなことが考えられるだろう。
- 技を掛けるときは、少なくとも一つの技を止まることなく収めなければならない。途中で止まってしまえば、エネルギーのロスになる。なぜならば、止まって、次の動きをスタートするには、その位置に戻すまで、動き続けているときの数倍、数十倍のエネルギーがいるからである。
- 手(上肢)が折れると、エネルギーをロスする。体幹から発するエネルギーが折れた処までしか行かず、末端まで届かないからである。また、折れるという事は、エネルギー(力)を伝える螺旋の遣い方ではなく、エネルギーを伝え難い平面的、直線的な遣い方をしていることにもなり、エネルギーが効率的に遣われていないことになる。
- 余計な動きをすると、その分エネルギーを浪費してしまう。つまり、無駄足など不必要な足の動きや、無闇に手をバタつかせることである。足や体幹が止まって、手だけを振り回したり、足が右左交互に規則的に動かなければならないのに、その順序が不規則になり、右であるべきところを左を使ったりすれば、無駄足遣いとなり、大いにエネルギーを浪費してしまう。
- エネルギーとして大きいものは、息(呼吸)であろう。息づかいが上手くいかなければ、息が上がってしまい、エネルギーを浪費してしまう。炭酸ガスも多量に排出することにもなり、温暖化現象を助長することになる。エネルギーを浪費しないためには、浪費しない息遣いを研究しなければならない。つまり、動きに合わせた息遣いをしなければならない。動きと息が合わないから、息が乱れ、体も疲労するのである。動きに息が合うようになったら、今度は息(呼吸)に動きを合わせるのである。それが出来れば息と動きの更なる省エネになる。
この他にもいろいろあるが、一言で言えば、省エネであるためには、理に合った理合の合気道をしなければならないということである。名人や達人たちは、無駄のない動きや体の遣い方をしていたはずだから、省エネをしていたことになる。上手は省エネ型であり、下手はエネルギー浪費型とも言えるかもしれない。
省エネの動きが出来れば、炭酸ガスの排出も少なくなるはずだ。地球に優しい合気道となるわけである。時代が要請している省エネを、合気道でも心掛けようではないか。
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